高額療養費制度というものをご存知ですか?
健康保険が適用される3割負担で算出された医療費の金額が、1か月間の合計で上限額を超えた場合、その超えた金額を支給してもらえるのが『高額療養費制度』です。
一般的に出産は保険が適用されないため、高額療養費制度も使えないのでは?と思われがち。
自然分娩の場合は適用外なのですが、帝王切開や吸引分娩などのいわゆる『異常分娩』の場合には、高額療養費制度が適用されます!
高額療養費制度とは
高額療養費制度とは、同一世帯において、1か月間(1日から月末日まで)に支払った医療費が一定の金額(自己負担限度額)を超えた場合に、超えた額があとで払い戻される制度です。
入院や手術の予定があって医療費が高額になることがあらかじめわかっている場合、先に申請をしておけば支払いを自己負担限度額までで済ませることも可能です。
高額療養費制度を利用できる条件
- 勤務先で健康保険組合に加入している被保険者
- 国民健康保険に加入している自営業者やフリーランス
出産する人が専業主婦であっても大丈夫です。
同一世帯の医療費がまとめて対象になりますので、家族のうち誰かひとりでも被保険者になっていれば申請が可能ですよ。
自己負担限度額は年齢と所得状況で決まります
窓口で支払う自己負担限度額は、年齢と所得状況により設定されています。
70歳未満の方の場合は、次のようになっています。
所得区分 | 自己負担限度額 |
標準報酬月額83万円以上 報酬月額81万円以上 |
252,600円+(総医療費-842,000円)×1% |
標準報酬月額53万円~79万円 報酬月額51万5千円~81万円未満 |
167,400円+(総医療費-558,000円)×1% |
標準報酬月額28万円~50万円 報酬月額27万円以上~51万5千円未満 |
80,100円+(総医療費-267,000円)×1% |
標準報酬月額26万円以下 報酬月額27万円未満 |
57,600円 |
低所得者 被保険者が市区町村税の非課税者等 |
35,400円 |
※総医療費とは、保険適用される診療費用の総額(10割)のことです。
診療を受けた月以前の1年間に、3ヶ月以上の高額療養費の支給を受けた場合には、4ヶ月目から自己負担限度額がさらに減額されます。
高額療養費の申請方法
高額療養費制度を利用するには、自分で申請を行う必要があります。
出産前と出産後、どちらでも手続きできますが、申請方法が少し違ってきますのでご注意を!
出産前に手続きする場合
帝王切開での出産が決まっている場合は、出産前に手続きをしておくことをおすすめします。
会計の際、自己負担限度額までの支払いで済むからです。
- 加入している健康保険組合の窓口に問い合わせ、限度額適用認定申請書をもらう
- 申請書に必要事項を提出し、健康保険組合に提出
- 限度額適用認定証を受け取る
- 出産した産院での支払い時に、限度額適用認定証を提示する
出産後に手続きする場合
自然分娩の予定が急遽帝王切開になったり、吸引分娩などを行った場合は、出産後に手続きを行います。
- 出産した産院での支払い時に、医療費総額の3割を支払って領収書を受け取る
- 加入している健康保険組合に、領収書と高額療養費支給申請書を提出する
- 指定した口座へ高額療養費が振り込まれる
出産後の手続きだと、申請から高額療養費が振り込まれるまで、3ヶ月ほどかかります。
国民健康保険の場合
国民健康保険に加入している場合、申請は国保の担当窓口に対して行います。
市区町村の国民健康保険窓口に問い合わせてみてくださいね。
高額療養費制度の注意点
差額ベッド代などは対象外
高額療養費制度の対象となるのは、あくまでも保険適用の対象となる医療費のみです。
そのため、入院中の食事代や病衣のレンタル代、差額ベッド代は高額療養費制度の対象外です。
入院が数か月に及んだ場合
妊娠初期は切迫流産、妊娠後期は切迫早産など、数か月にわたって入院が必要になる妊婦さんもいますよね。
高額医療費制度は、月ごとの医療費が限度額を超えていれば何度でも請求できます。
1ヵ月ごとに支給申請書を記入・提出する必要がありますが、診療を受けた月の翌月の初日から2年間はさかのぼって請求できますので、退院後に申請を行う場合はまとめて申請しても大丈夫です。
ただし退院後に申請するとなると、退院時の支払いが莫大な金額になります。
できれば入院中に限度額適用認定証を発行してもらい、窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えましょう。
限度額適用認定証は1年間有効ですので、妊娠期間中だけなら一度申請すればずっと使えます。
まとめ
妊娠中は何があるかわかりません。
予想外に長期の入院になってしまったり、予想外の異常分娩になってしまうことも十分考えられます。
事前にこういった制度を知っておくと、経済的な不安がずいぶん和らぎますよね。
妊娠・出産以外で医療を受ける場合にも当然使える制度ですから、ぜひこの制度のことを覚えておいていただけたらと思います。